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パリ もろ人にクリスマス

2011年01月07日

 パリ近郊の自宅最寄りの地下鉄駅ホームに数人の路上生活者が寝泊まりしている。冷え込む夜、小ぶりのモミの木の生木を囲み、仲良く談笑しているように見えた。

 「親切な人がくれたんだ」。いつもは無言で寝袋にくるまっているひげの中年男性だったが、この夜は興奮気味。袋詰めチョコレートをモミの木の下に置いたら「ジュワイユー・ノエル(良いクリスマスを)」と笑った。

 ところが数分後、防弾チョッキの警察官が10人ほど小走りにやって来て、全員を連行していった。間の悪いことに仲間内の殴り合いのけんかの直後だったという。

 支援団体によると、パリの路上生活者は約1万人。日本全国のそれと、さほど変わらぬ人数が東京の山手線の内側ほどの狭い範囲に暮らしている。“人口密度”が高いから、もめ事も多いのかも。

 翌日の夜。あの男性はホームに戻っていて「ジュワイユー・ノエル!」と手を振ってくれた。(清水俊郎)