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バンコク 命をつなぐカップ麺

2011年01月15日

 深夜、静まり返ったバンコク支局でカップ麺をすすっていると、昨年10月にタイを襲った大洪水のことが思い浮かんだ。258人が命を落とす中、大勢の人が配給のカップ麺や即席麺で空腹をしのいだ。

 「1週間、家の2階に避難して家族5人で毎日たくさん食べた。カップ麺は災害時にとても必要だ」。被害の大きかったタイ中部に住むイヤオさん(30)はそう話す。10月末にインドネシアの島を襲った津波では救援物資の運搬が難航。ヘリから落としたカップ麺は孤立した島民の命綱となった。中国やハイチの地震でも日清食品創業者の故安藤百福氏が生んだこの世界的な食べ物が大活躍した。

 安藤の提唱で13年前に発足した世界ラーメン協会は、災害時に世界中のメーカーが即席麺を迅速に提供する態勢を取る。偉大な先人を思いながらタイで一番人気のトムヤムクン味を口に入れた。辛くてすっぱい汁が腹に染みわたり元気が湧いてきた。 (杉谷剛)