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重慶 タクシー車両も過労

2011年04月08日

 中国・重慶は霧の街だ。中国内陸部の盆地にあるため空気が滞留、なかなか霧が晴れない。

 その重慶の郊外で、タクシーに乗っていたら車内に煙が立ち込めた。霧が舞い込んだかと思いきや、どうも焦げ臭い。見れば、ハンドルから白煙が噴き出しているではないか。

 慌てて車外に飛び出した。だが、他のタクシーを拾おうにも、郊外でつかまらない。ドライバーはボンネットをほんの一瞬だけ開けて、すぐさま「問題ない」。何が問題ないんだよ-と心中で突っ込みながら、仕方なく車内へと戻った。

 聞けば運転手の働く会社は2人1組で昼夜の2交代勤務。2人で1台の営業車を共有するので車は延々と走り続けているという。「導入されて1年の車だが、もうこの距離だ」と指さしたメーターは30万キロ弱だった。

 ドライバーは、車両使用料として1日220元(約2800円)を会社に支払う。もうけを出して給与を確保するため、休みを取らずに走り続けるのだという。「昨年、待遇改善を求めてデモをしたが、すぐさま制圧された」と寂しそうにつぶやいた。

 その後、車は火を噴くことなく取材先を回り続けてくれた。別れ際、ドライバーは「今日はずっと客を乗せて走れた。いい一日だった」とほほ笑んだ。 (今村太郎)