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モスクワ 善意と悪意国境なし

2011年05月11日

 最近、北方領土問題で対立先鋭化と騒いでいたのがうそのように東日本大震災の発生後はロシアでも日本への励ましの声であふれている。

 領土問題をめぐり愛国者団体が抗議デモを繰り返したモスクワの日本大使館前に、今では献花台が設置され、犠牲者にささげられた花束でいっぱいだ。

 「私たちの心はあなたたちとともに」

 「日本に滞在したときの皆さんの温かいもてなしが忘れられない。大災害を乗り越えられるよう神様に祈っています」。記帳用のノートに書き込まれた温かなメッセージを読むとあらためて、思いやりの心に国境はないと痛感する。

 一方、支局にはこんな電話もあった。

 「日本の悲劇に心から哀悼の意を表します。つきましては御社に勲章を贈呈します」

 何でも政治家や著名人も名を連ねる歴史ある団体だそうで、震災を契機にロシアに貢献があった日本企業を激励し、たたえるのが目的という。

 ロシアに貢献した覚えはなかったのでよく聞くと、勲章は無料のようだが団体への登録料に6万ルーブル(約17万円)が必要だとか。

 残念ながら悲劇の陰でひともうけをたくらむ連中も国境を問わず存在するらしい。

 多くのロシア人の温かな心も汚された気がして電話をたたき切った。 (酒井和人)