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ギザ 騒乱のツケ観光客減

2011年04月18日

 「日本人か!? 写真を撮らせてくれ。フェイスブックに載せるから」。エジプト・カイロ近郊ギザの3大ピラミッドが見える小さな丘に着くや、土産売りの男が声を弾ませた。「日本人なんて、どれだけぶりだろう!」

 暗殺されたサダト元大統領がピラミッドと対峙(たいじ)して思索にふけった丘だが、今では観光客が押し合いへし合いで記念撮影する観光名所。だが、土産売りによると「騒乱後、観光客が激減した。特に日本人はまったく来ない」という。日本人来訪は、フェイスブックのネタになるほど“珍事”なのだ。

 日本語ガイドのフシン・ナザフさん(29)も「日本語を勉強して、後悔してます」と話した。学生時代、カイロの文化センターで学んだ日本語は、ほぼネーティブレベル。「本来、観光シーズンの春に貯金し、夏場をしのぐ。でも、今年はずっと貯金を崩して生活している」という。

 騒乱時、カイロ市内だけでなく、ピラミッド周辺も暴徒が略奪などに及んだ。だが、いまカイロやギザを歩いて、危険を感じることはほとんどない。

 ナザフさんは日本語に見切りをつけ、英語ガイドへの転向に向けて勉強中だ。別れ際、「日本のみなさんに言っておいてください。もう大丈夫ですからと」と話し、寂しそうに手を振って笑った。(今村太郎)