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ソウル 肩触れ合う絆が支え

2011年06月01日

 韓国で街を歩くと、よく肩がぶつかる。大概の人は無頓着だ。当地でも「袖触れ合うも縁」と言うが、韓国の知人は「肩触れ合うも縁ですよ」と笑う。そんなソウルの繁華街に日本の留学生らが立ち、東日本大震災の支援募金を呼び掛けた。

 「がんばね!」。日本語を習いたての韓国人は1文字間違えて横断幕に書き込んだ。通りすがりの中国人は「日本加油(頑張れ、の意)!」。タイ語、英語も続き、ホームレスの男性は募金後、名前らしき達筆の字を残した。畳一畳大の幕2枚はすぐ埋まった。

 募金を発起した男子留学生は宮城県気仙沼市の出身。津波で家は泥につかり、独り暮らしの母とは5日間連絡が途絶えた。「普段は1カ月電話しなくても平気なのに気が狂いそうになった。人は人とつながっているという実感が心の支えなんだと知りました」

 彼と仲間らは募金支援のミニコンサートに招かれた。予告なく、日本の唱歌「ふるさと」と「浜辺の歌」の日本語での合唱が始まった。女子留学生たちは思わず号泣した。

 最近、彼に気仙沼の友人からメールが届いた。「家も会社もすべて失いました。今は人との絆だけを支えに生きてます」

 ソウルの街で通りすがりの縁に励まされた彼は言った。「もう泣いてらんねえべ-」(辻渕智之)