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パリ 熱い心ふるさと届け

2011年06月08日

 フランスで音楽を学ぶ日本人学生と卒業生ら110人が今月、パリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部で開いた東日本大震災チャリティーコンサート。欧州各地で活躍するプロも多いだけに練習は1日限りで、全員がそろったことは1度もなかったという。

 それでも、ぶっつけ本番と思えぬ繊細な演奏で武満徹の「弦楽のためのレクイエム」などを披露した。指揮者の阿部加奈子さん(37)は「熱い心という点で200パーセントの出来でした」と振り返る。

 1万キロ離れた異国にいても被災地のために何かがしたい-。そんな思いが一つになったのは間違いないが、パリ在住25年の音楽評論家三光洋さん(50)は「それだけではない」と分析する。

 日本人学生らは3月の震災直後から、会員制交流サイト「フェイスブック」で数人ずつ声を掛け合い、小さな室内楽の慈善公演を50回以上開催。「その積み重ねが、大きな交響楽団を編成した時の呼吸の合った演奏につながった」と三光さん。結果的にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団など超一流のオーケストラと同様の手法になったという。

 コンサートの締めくくりは「ふるさと」の合唱。「うさぎおいしかのやま…」の意味を知らないフランス人の観客も、涙を流しながらハミングで加わっていた。(清水俊郎)