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バンコク 正月気分に水を差す

2011年06月12日

 バンコクで過ごすタイ正月(4月13~15日)は今年で3回目だが、初めて通常の「ソンクラーン」(タイ正月)を経験した。過去2年のこの時期には首都に非常事態宣言が発令され、デモ隊と治安部隊の衝突で流血の惨事が起きていた。

 一昨年は中部パタヤで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議を中止に追い込んだタクシン元首相派のデモ隊がバンコクでも反政府抗議活動を行い、一部のデモ隊がバスに放火するなど活動が過激化した。正月初日の13日、治安部隊と衝突し110人以上が負傷。足から流血しながら取材に応えてくれたデモ参加者男性が苦痛に顔をゆがめ、「実弾を撃ってきたんだ」と訴えていたのを鮮明に思い出す。

 昨年も4月10日に治安部隊がタクシン派デモ隊の強制排除に乗り出して衝突となり、取材中の日本人カメラマンを含む20人以上が死亡。衝突の映像がテレビやインターネットで盛んに流され、デモ隊が抗議活動を首都の繁華街で継続する騒然とした雰囲気の中、正月を迎えた。

 昨年の衝突はその後、市街戦の様相を呈し、計91人が死亡した。タイ正月は国民が水を掛け合って祝う。今年もその様子を見ていたが、流血の場面や銃声が同時に脳裏によみがえってきた。(古田秀陽)