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リヤド 異国の地 わき出る夢

2011年06月18日

 「この国はチャンスがあふれているんだ」。世界一の石油埋蔵量を誇るサウジアラビア。首都・リヤドで知り合った出稼ぎ中のヨルダン人青年(28)は目を輝かせた。

 サウジは人口の4人に1人が外国人。貧しい周辺国から高収入を求めて押し寄せ、今や経済の足腰として欠かせない。フリーのエンジニアとして働く青年も、その1人だ。

 膨大な石油収入のおかげで、サウジ人は豊かな生活を謳歌(おうか)している。イスラム教の戒律は世界で最も厳しいが、街中は大型モールや高級ブティックが並ぶ。若者の失業率は高いものの、国はサウジ人の雇用を重視する「サウジ人化」政策で、自国民を手厚く保護している。

 青年は、ヨルダンにいたころは貧しく、家族の支援でようやく大学に進学。だが、就職後の収入はサウジのせいぜい5分の1という。「数少ないチャンスを逃すと、人生は二度と浮き上がれない」

 5年ほど前、思い切ってサウジへ。才覚と、がむしゃらな働きぶりで当初の勤務先から独立。今では時折、大手企業から受注が舞い込むまでに。夢は、自分の会社で大事業を手掛けること。やがては帰国し父や母を楽にさせるのが願いだ。

 別れ際、「成功を祈るよ」と告げると、笑顔で何度も手を握り返してきた。 (今村実)