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ニューヨーク 米国の叫び背に帰国

2011年06月23日

 3年間の任期を終え、引っ越しの準備をしていた夜、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者殺害のニュースが世界を駆け巡った。荷造りの手を止め、世界貿易センター跡地「グラウンド・ゼロ」に駆けつけた。

 20代の若者たちがビール瓶を片手に国歌を歌い、信号機によじ登り、星条旗を振って「米国の勝利」を祝っていた。

 静かに若い男性の遺影を掲げる中年女性がいた。思わず「息子さんですか」と声をかけた。女性は「いえ夫です」と少し笑って答え「ようやく正義が下った」と涙をにじませた。遺族にとっての10年間という歳月をその時初めて実感した。

 10年前の「9・11」直後、日本から現場に飛んだ。数1000人が埋まったがれきの光景と煙のにおいが今も焼きついている。灰まみれの窓には「ビンラディンを殺せ」と指でなぞり書きがされていた。

 あれから10年、米国はその通りにビンラディン容疑者を殺した。テロとの戦いが終わったとは誰も思っていないだろう。ただ、狂ったように「USA!」と叫び続ける若者たちの姿は、敵討ちを果たしたという以上に、不況や長引く戦争で米国が失いかけていた自信を取り戻したかのような熱があった。俺たちはナンバーワンの国なんだ-。そんな切なる米国の叫びを聞きながら、グラウンド・ゼロを後にした。 (加藤美喜)

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