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パリ イケメンに引け目…

2011年07月04日

 パリのシャンゼリゼ通りで、上半身裸で青いジーンズだけを身につけた若い男性30人が歩道に並び、笑顔を振りまいていた。アングロサクソン系、ラテン系、東洋系…肌の色はさまざまだが、全員そろって美形。細いのに筋肉質の体でファッションモデルのような思い思いのポーズを決めている。

 通り掛かりの女性たちは大騒ぎ。男性たちに話し掛けたり、一緒に記念写真を撮ったり。「天から男が降ってきた!」と1980年代のヒット曲「ハレルヤ・ハリケーン」を歌いながら男性に抱きついてしまうつわものも。

 「モデルの賃上げ要求デモ?」

 「いいえ。若者向けの米国のファッションブランド店が新しくできるのでその宣伝です。僕らは店の従業員」

 年間に1億人以上が訪れる世界屈指の目抜き通りで外資系衣料店の進出が相次いでいる。ありきたりの告知では目立てないと経営陣が考えたらしい。

 イケメンの店員たちは翌日、洗いざらしの白いドレスシャツで再登場。翌々日は品のある白いセーター姿で店のベランダから通行人に手を振った。

 キャンペーンは1週間も続き、最近腹のたるみが気になる45歳の私はその間、ずっと約70メートル離れた反対車線の歩道を使った。(清水俊郎)