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ソウル 学生のデモ10年一昔

2011年08月02日

 十数年前、ソウル中心街で30万人が参加したデモを取材した当時、解散を命じた警官隊が発射した催涙弾が目の前でさく裂し、苦しんだ経験がある。

 窓ガラスが割られた飲食店が無残な姿をさらし、催涙弾の臭いがなお残るデモ翌日の大学街を、ハンカチで鼻と目を押さえながら急いで通り過ぎたことも何度かあった。

 大学生らが6月、ソウルで学費の値下げを求め、デモや集会を連日のように行った。都心部の清渓広場で同月半ばに1000人規模で行われた集会の様子を見に行った。

 今回も集会参加者と警官隊との衝突の可能性も念頭に置いていたのだが、学生の表情は総じて明るく、フォークコンサートもありでどちらかといえば、お祭りムードだった。

 集会が終わりに近づいたころ、腹をすかせて近くのハンバーガーショップに入ると、入り口近くで、警戒に駆り出されたとみられる若い制服姿の警察官数人がポテトをつまみながら、雑談に花を咲かせていた。そのそばでは集会に参加した学生同士が談笑していた。

 何とも奇妙な光景だった。高額の授業料が負担となり、その改善を求めているのは確かだ。ただ、かつて警官隊と激しく衝突するデモを目の当たりにした者としては、時代の流れを感じざるを得なかった。(城内康伸)