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シリブリ 拷問映像流出の裏に

2011年08月09日

 「これが自由だぜ!」。映像の中で、迷彩服の兵士たちが皮肉を込めたせりふを吐き、5、6人の男性を何度も蹴り上げる。地面に寝かされた男性らは、目隠しの上に後ろ手に縛られ、無抵抗だ。

 6、7人の兵士が、今度は男性らの背中を靴で踏んだ。カメラに向かいVサイン。勝ち誇ったように醜い笑いを見せた。

 自由を求める反政府運動に、独裁政権の激しい弾圧が続くシリア。6月下旬、トルコ北西部シリブリに在外シリア人活動家らが結集した。1人が見せてくれた映像に、兵士が市民に暴行をしているという場面があった。

 他にタイヤをかぶせ身動きできなくした少年を当局者だという男が殴り続ける場面も。なぜ、活動家らはこうした拷問の内部映像を入手できたのか。

 「この国では、カネさえ払えば何でも手に入るのさ」。当局の中には、映像を反体制派に売り、小遣い稼ぎをする輩(やから)がいるという。独裁体制は、そこまで腐敗しきっている。

 在外シリア人らは国内のデモ隊と連携している。この日の集会で、国際社会に惨状を訴えていくと誓った。

 合間に会場ホテルのバルコニーで輪になり、祖国の大きな国旗を広げた。「民衆は!体制の!打倒を求める!」。韻を踏んだシュプレヒコールが、異国の青空に何度も響いた。(今村実)