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バンコク 一杯のち一票はダメ

2011年08月15日

 6月最後の土曜日の深夜。仕事帰りになじみのラーメン店に立ち寄り、真っ先にビールを注文したところ、いつもは愛想のいいタイ人の女性店員がつれなく、「きょうはダメよ」。えーっ。思わず、すっとんきょうな声が出てしまった。

 その日が総選挙の不在者投票日の前日だったことを忘れていた。本番もそうだが、タイでは投票前日の午後6時から投票終了後の深夜0時まで、酒類の販売が禁止される。助手に聞くと「酔っぱらって、でたらめに投票しないため」。そのほか、酒をふるまっての買収防止とか、選挙談議に酔いが加わり乱闘になるのを避けるとか、いろいろあるようだ。

 投票日当日。いつも渋滞しているバンコクの道路は、がら空きだった。住民票を実家に置いたまま、働きに来ている人が多く、その人たちが投票のために帰省したというのには、いささか驚いた。投票は午後3時に早々と締め切られたが、それでも投票率は75%に達した。

 タイ初の女性首相となるインラック氏旋風があったとはいえ、4年前も74%と高かった。1票を大事にするタイ人気質なのだろう。原稿を送り終え、乾杯したくなった。支局の冷蔵庫から缶ビールを出し、渇いた喉に流し込んだ。禁酒日でも買い置きの酒を飲むのは構わない。それで事前に用意しておいた。うまい。爽快な気分がやってきた。 (杉谷剛)

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