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ウラジオストク 車商売も上がったり

2011年08月18日

 「ぜんぶ、プーチンのせいだよ」。来年秋のアジア太平洋経済協力会議(APEC)開催へ向け、会場建設やインフラ整備が進むロシア極東ウラジオストク。7月上旬、町外れの中古自動車市場で仕事仲間とゲームのバックギャモンを楽しんでいた男性(40)が吐き捨てるように言った。

 極東では日本製の中古車販売が盛んだったが、2009年1月にプーチン首相の主導で導入された輸入自動車関税の引き上げで、壊滅的打撃を受けた。

 今はどうにか収まったが、3月の福島原発事故の直後は「日本車は汚染されている」との風評が流れ、低迷に追い打ちをかけた。

 男性によると、売り上げも収入も良かったころの3分の1以下で、廃業した仲間も多いという。毎日、暇を持て余し「バックギャモンの実力だけは上がったよ」と苦笑した。

 ロシア政府はAPECを起爆剤に開発促進をアピールするが、地元では冷ややかな反応が少なくない。

 中心部の駅前で雑貨を扱う露天商の女性(58)は「APECでもうかるのは金持ちだけ。期待しても、裏切られる」とぴしゃり。

 産業が疲弊し、人口流出が続く極東では政府への不信感が深く根を張っている。APECも期待外れに終わったら、庶民の不満が噴出する起爆剤になるかもしれない。 (酒井和人)