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ソウル 懸け橋評価着地点は

2011年08月29日

 在韓被爆者の援護活動などに携わる高橋公純さん(70)に8年ぶりに会った。2000年に群馬県にある寺の住職を退き、家族とソウルに移住。04年に韓国に帰化した。

 高橋さんは前回会った時、韓国初の女性飛行士、故朴敬元(パクギョンウォン)さんの記念碑を、彼女の故郷である韓国南部の大邱市に建立しようと、同市との折衝などで駆け回っていた。

 朴さんは1933年に単独飛行で祖国を目指し東京を出発。視界不良で伊豆半島の玄岳に墜落死した。高橋さんは、日韓の懸け橋になろうとした朴さんを知る人が韓国には少ないことを知り、碑の建立に動いた。

 「ところがね、碑は建てられなかったんですよ」。高橋さんは残念そうな表情を浮かべた。建立計画が具体化する直前で、地元関係者の反対に遭って頓挫したという。

 東京・立川にあった東京日本飛行学校で飛行技術を学んだ朴さんを韓国では、親日派と見る向きがある。高橋さんの原作で朴さんの生涯を伝える漫画を出版する計画もあった。しかし漫画家が「親日派の漫画を描いたといわれては食べていけない」と断ってきた。

 「彼女の生きざまが韓国で素直に評価される日が早く来れば、いいんですが」。高橋さんの手元には、朴さんについて書いた約600枚の原稿がそのまま残る。 (城内康伸)