2011年09月03日
海辺のホテルのプールサイドで、盛大な結婚披露の宴(うたげ)が催されていた。地中海の島国マルタの保養地セント・ジュリアン。ウサギの蒸し煮やメカジキの焼き物などのごちそうが日暮れから深夜まで次々と供され、客は入れ代わり立ち代わり500人を優に超えた。
ジャズを奏で続ける生バンド、惜しみなく栓を抜かれる高級ワイン。「でも、新郎新婦は金持ちや有名人ではありません」とホテルの接客係のフィリップスさんは強調する。それにしては客が多すぎるのでは? 「すべての知り合いに来てもらうのが、この国の披露宴。1000人を超えることもあります」
国民約41万人の95%がカトリック教徒で、「結婚は神聖な契約」とみなす伝統がある。バチカン市国とともに離婚を今も法律で禁じている世界でも数少ない国だ。
現実にはうまくいかない夫婦もいるから、5月の国民投票と7月の国会採決で、年内にも離婚が合法化される運びとなった。でも、簡単に別れるカップルは増えないと見る向きが多い。
「あんなに立派な披露宴を2回もやるわけには…」と笑うのは、10年ほど前に島内の古城でマルタ人男性と結ばれた日本人女性。「お金もかかるし、島で暮らし続ける人たちにとってはちょっと恥ずかしいですよ」(清水俊郎)