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温州 事故現場 見えた暗部

2011年09月01日

 中国浙江省温州市で発生した高速鉄道事故から5日目の早朝。捜索作業がほぼ終了し、記者も“一番乗り”で事故現場に入った。

 鉄道高架から車両が転落した場所の周囲はレンコン畑や雑草地。救出作業で砂利や土が大量に入れられたが、まだぬかるんでいた。

 残った作業員はショベルカーで一度埋めた車両の残骸を見つけては掘り出す作業を黙々と続けていた。

 すると、高架下に人影が5~6人。スコップやつるはしで地面を掘っている。近づいてみると、上半身裸や泥で汚れたTシャツ姿の老若男女が、泥まみれの車両の残骸を探しているではないか。

 初老の男性に声をかけてみた。しかし、金属探しに没頭してこちらを振り向かない。もう一度、声をかけると「金になる」と一言、つぶやいた。地元住民によると、工場の多い温州は廃品回収が盛んだという。

 7日目の昼。前日に温家宝首相が現地入りし砂利できれいに整地された現場には、多くの一般人が犠牲者の哀悼に訪れた。重慶市から現場見たさにわざわざやってきたという女性はサングラスにミニスカート姿。砂利にヒールをとられながら、iPhone(アイフォーン)でパシャパシャ記念撮影していた。高度成長の暗部。どちらも異様な光景だった。(安藤淳)