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カイロ 台頭…味を占める?

2011年09月13日

 カイロの高級ホテルで開かれた食事会「イフタール」。イスラム教のラマダン(断食月)で、日中に断食した人々が、日没後に初めて味わう料理だ。そこに、国民の誰もが知る有名な元プロサッカー選手が突然現れ、報道陣が騒然となった。

 主催したのは穏健派のイスラム原理主義組織ムスリム同胞団。マイクを向けられた元選手は、支持者であることをカミングアウト(公表)し驚かせた。

 同胞団は貧者救済などで庶民に浸透し、伸長を恐れた旧ムバラク政権が激しく弾圧。4万人が逮捕され、イフタールを開くのにも苦労するなど日陰者のような存在だったが、今や次の選挙で議会の第一党を狙う勢いだ。

 会場は、政財界の要人や関係者ら約1000人が集まる盛況。最高指導者は「今年のラマダンは格別な味だ」と浮き立つ思いを語った。

 ラマダン中、エジプト全土で見られる大小の青年サッカー大会も様変わり。昨年までは、与党・国民民主党の議員らが、地元の選挙区で開く例が目立った。優勝杯を贈り、知名度アップを図るのだ。

 その同党は民衆革命で解体。今年は、同胞団の主催する大会があちこちで目につく。

 表舞台に駆け上がり、警戒感が広がる中でアラブの春を謳歌(おうか)する同胞団。ラマダンでも主役交代を見せつけている。 (今村実)