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ベルリン 多文化社会迷う1票

2011年09月21日

 ベルリンの街角がポスターで彩られた。9月18日投票の市議会選が迫ってきた。

 福島第一原発事故を受け、各州で環境政党「緑の党」が躍進したが、国が「脱原発」を決めたため、原発がないベルリンでは争点が一層はっきりしない。取材先で「投票のポイントは?」と質問すると「住宅事情の改善、公共施設の充実…。もう少ししてから決めるよ」という調子だ。

 そんな中、「性に関する先入観がない小学1年生から、同性愛について授業で教え、偏見のない社会にする」という2年前に導入された市政の連立与党の教育政策に反発する政党が設立された。

 ドイツでは、すでに約10年前から同性婚が法的に可能だ。新党は「同性愛には反対しないが7歳の子に教えるなんて間違いだ」と熱いが、既成政党に対抗する勢力になるのは簡単ではないだろう。

 ベルリン市長も同性愛者。10年前、ドイツの有力政治家としてはおそらく初の公表だった。告白会見で「それもまた良いこと」と語り流行語に。直後の市議会選で圧勝し、今も支持率は高い。

 性の多様性同様、文化や主義主張も自由で多種混在するこの街。それだけに政治の受け皿づくりも難しい。「何でもありというのは、やっぱり問題」と嘆く隣人の1票も行き場がなさそうだった。 (弓削雅人)