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ロンドン 過ちて謝らざる流儀

2011年10月01日

 ラグビーの試合をロンドンの自宅で見ていて、思わず叫んだ。「なんで、他の選手に謝らないんだ」。得点チャンスなのに初歩的なミスで落球してしまったのだ。だが、その選手は平然とプレーを続けている。済まなさそうなそぶりもない。

 そういえばと、思い出したのが旅先で思わず加わることになったビーチバレー。英国人の中に1人入って男ばかり6対6。白熱したゲームになったが、海辺での初めてのバレーは風でボールが流され、思ったようにコントロールできない。

 ちゃんとレシーブしたと思っても、少しずれて腕に当たり、あらぬ方向に飛んでいってしまう。「ソーリー」と無意識に口に出るが、他の人たちはどれだけ簡単な失敗をしても、何も言わない。

 ゲーム後、なぜ言わないのかを酒を飲みながら聞いてみると口々に「謝るとマイナスの気分になる。勝つためには言わない方がいい」。責任の所在が自分にあることをはっきりさせたくないという意味ではないようだ。

 遊びのバレーでさえ、こうなのだから、普段はさぞ「すみません」の言葉を聞くことはないと思えそうだが、そうではない。ロンドンで満員電車から、降りる時など「ソーリー」「エクスキューズミー」の連発。これは謝っているわけではないからこそ、なのだろうか。(有賀信彦)