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ロサンゼルス ネットの功罪を痛感

2011年10月02日

 サイバーの世界で何が起きているのか、米国の専門家に話を聞くことが多い。そのたびにインターネットを利用している現代社会の脆弱(ぜいじゃく)性が浮き彫りになっていると感じる。

 米国に限らず、政府・企業など既得権益を維持する“権力側”は圧倒的な力を振りかざし、いわば好き放題やってきた。一方、情報発信の手段が限られていた一般人は、ネットという強力なツールを得て十数年前には不可能だった発言や大掛かりな行動に出ている。

 「国民の知る権利」などを根拠にした言動が、時として違法性を伴うと指摘し、政府や企業がネットやパソコンへの依存を逆手に取られ、攻撃を受けやすくなっていると分析する専門家が目立つのは米国だけだろうか。

 攻撃を受ける対象には当然、国家も含まれる。国家対国家のサイバー戦争が始まって数年がたつ。

 政府や企業は従来、攻撃者側と全面的に対決し戦ってきた。「しかし最近の際立った傾向として、権力を持つ側が、攻撃する側の技術を抱え込むなどの懐柔策を取るようになっている」と専門家。

 攻撃者側の言動が、世界的共感を呼ぶことも多い。だが何をどこまでネット上で公開すべきなのか。激化するサイバー戦争の実態を取材するたびに、きめ細かい議論の必要性を痛感する。(野口修司)