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高雄 埋められた石板の怪

2011年10月03日

 南シナ海に臨む台湾南部の高雄市旗津に「戦争と平和記念公園」がある。日本時代、日本兵として出征し、戦後は国民党の中華民国軍として中国共産党との国共内戦を戦い、捕虜になり、今度は中国共産党の義勇軍として朝鮮戦争の戦場に赴いた台湾人を慰霊する公園だ。園内には記念館のほかに戦争で亡くなった彼我の戦士を悼む幾つかの慰霊碑が立っている。

 その1つに私財をなげうって記念公園建設に走り回っていた元日本兵で元台湾兵の許昭栄氏の記念石板がある。2年前の完成時は腰の高さほどあったのが、なぜか20センチ足らずにまで埋め込まれてしまった。石板には許氏の上半身の肖像が彫られているが、石柱の壁面にあった名前は土の中に隠れてしまった。

 「反日かつ台湾人に批判的な連中が、埋めて、踏み付けているんですよ」と知人は言う。真偽のほどはいかにと記念館を訪ねた際に係員に聞くと「えーっ、そのーっ、市の文化局が…決めたんです」としどろもどろ。許氏は記念公園建設に反対の勢力に抗議して3年前、この石板の所で壮絶な焼身自殺を遂げた。どうも知人の解説が正しそうだ。

 「名前もないし低すぎて見にくい」と言うと係員は「元に戻すことを検討しています。公園建設に反対していた3人の市議会議員は昨年の選挙で全員落選しました」とにこっと笑った。(迫田勝敏)

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