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ニューヨーク 今や不「自由の女神」

2011年10月07日

 ニューヨークの名所「自由の女神」が、10月末から1年間閉鎖される。防災設備の強化のほか、像の内部に新しい階段を作り、王冠の展望台まで上りやすくするという。

 この女神、10年前の米中枢同時テロ後も長く閉鎖されていた。「安全対策」が理由。台座部分と博物館は2004年8月、王冠は09年7月に再開したが、その後の女神はちょっと気難しい。

 まず、像があるリバティー(自由)島へのフェリー乗り場で空港並みのセキュリティーチェックを受ける。上陸後もエックス線のゲートがあり大きなかばんは持ち込み禁止。「ロッカーに預けて」と警備員に指示された。

 やっとたどり着いた台座では、監視カメラが光っていた。管理職員のフランク・ミルズさん(63)は「万全の警備」と胸を張るが、イボのように突き出た黒いレンズが気になって落ち着かない。

 その台座には、19世紀の米国の女性詩人エマ・ラザラスの詩が刻まれている。いわく…、「疲れたる貧しい人々を 自由の空気を吸わんものと…我がもとへ送りとどけよ 我は黄金の扉のかたわらに 灯火をかかげん」(田原正三訳)。

 米国の自由を象徴する柔和な女神。テロがそうさせたのか、真下から見上げた顔は怒っているようにも泣いているようにも見えた。 (青柳知敏)