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北京 疑念フェスティバル

2011年10月14日

 「チケットあるわよ。安くするわ」-。北京で初めて開かれた「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」の演奏会。当日券売り場に並ぶと、女性のダフ屋が声を掛けてきた。

 彼女、こちらの不審そうな顔を感じ取ったのか、おもむろに売り場に近づき、手に持っていたチケットをひらひら。「この席がどこか、見せてあげてよ」。と、カウンター上の画面の座席表に矢印が示された。席は前から2列目の右端か-。ん? ちょっと待て。ホールはダフ屋を黙認しているのか?

 正規に買えば360元(約4300円)だが「300元にしとくわ」と彼女。一瞬、どうしようか迷ったが、ステージ正面の席で聴きたかったのと、ダフ屋から買うことへの抵抗もあり、断った。

 すると彼女は狙いを近くの2人組に。興味を示しつつ、チケットが本物か疑心暗鬼の2人に「まず1人が入る。問題ないのが確認できたら、残った人が料金を払い、あとから入るのはどう?」と後払い方式を提案。商談が成立し、2人は彼女の言われるがままにやっていた。

 2人に駆け寄り、チケットを見せてもらった。「正規」のチケットと違い、値段は印刷されておらず、「関係者向け贈呈用」とあった。どんな流れで出回ったかは分からないが、なんだかにおった。 (朝田憲祐)