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チュニス 「春」の恵み骨太な味

2011年10月12日

 日本各地にこれをおいしく食する地域があることは知っているが、ボラという魚を積極的に食べたいと思ったことはない。釣り人が敬遠する「外道」の印象が強いからだ。

 「ブーリだ。どうぞ」。革命から8カ月を迎えたチュニジアの首都。官公庁街で、抗議の座り込みをする労組幹部が、取材の途中に焼き魚を持ってきた。柔らかそうな白身。辞書にはやはり「ボラ」とあった。「チュニス湖で捕れたやつだ」

 やや過激なその労組は政府の腐敗を糾弾していた。周囲に男女10人ほどが怖い目をして座っている。「革命後も政府は変わってない。われわれは戦い続ける」。幹部は怒りを込める一方、「こんな活動が、公然とできるのは革命のおかげだ」とも言った。

 「警察国家」だったころの記憶は市民の中に生々しい。目が合っただけで警察に職務質問されたといった日常的なものから、宗教活動に関わった親戚が罪もないのに連れて行かれて、獄死したといった悲惨な出来事まで。

 「仲間とこんな場所で食事できるなんて昔はあり得なかった」と幹部。同志たちはいつの間にか表情を緩め焼き魚を食べている。

 ブーリは予想どおり、やや苦手な部類の味だった。が、これぞアラブの春の恵みだと思って、硬い骨以外すべて食べさせてもらった。 (野村悦芳)

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