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サンダーランド 地元の人にも青い鳥

2011年11月11日

 街の大切な“遺産”であることを雄弁に物語っていた。英北東部のサンダーランド。中心部の博物館に入ると、ビクトリア時代の衣服や陶芸品、ガラス装飾品などが並ぶ中、白い乗用車が異質の輝きを放っていた。

 日本人にもなじみ深い「ブルーバード」。この地で日産自動車が生産工場を稼働させてから25年。生産一号車を示す「JOB(仕事) 1」のナンバープレートが誇らしげだった。

 サンダーランドは1980年代に入り、主産業の造船業の衰退や炭鉱閉鎖が相次いだ。高失業率にあえいだ人々を救ったのが日産の工場進出だった。従業員数は現在、約5000人。部品生産など下請け会社を含めると、英北東部の労働人口10万人のうち18.5%が自動車産業に従事する。

 工場創設期から勤務するボブ・サンデルソンさんは「採用申込書を出して自分の人生が変わった。ここで伴侶も得た」と振り返る。その申込用紙は、実際には受け付け前の見本の紙だったが、「最初に応募した社員」の証しとして工場内に保管されているという。

 日本人としては、日系企業の貢献に光を当てがちになるが、工場の発展は地元の人々の愛着があってこそ。現地を訪れれば、ブルーバードを街の重要な史実として展示する気持ちがよく理解できる。(小杉敏之)