2011年11月10日
「ここに立てるとは夢にも思わなかったよ」。リビアの首都トリポリ。元最高指導者カダフィ大佐の旧邸宅前で、まだ同氏が逃亡中だった時期に、見物客を目当てに露店を開いていた3人組の少年たちが、明るく語った。
旧邸宅の広大な敷地は、軍事施設を備えた要塞(ようさい)。以前は人々は近づくことも恐れた。今や金曜日にはマーケットが開かれるといい、市民が自由を味わう場所だ。
少年たちが売っていたのは音楽CD。収録された歌のタイトルは「カダフィはどこに逃げたの」「自由リビア」など。
誰が歌うどんな内容なのか「カダフィはゴキブリ」なんていう曲まである。売り上げを聞くと「1日100ディナール(約6000円)あるよ」と胸を張った。高校生(15)は落ちていた弾丸を見せ「ネックレスに加工して売るんだ」と得意げだ。
中学卒の無職少年(16)は「うちの兄ちゃんなんか、大学まで出たけど結局、仕事が見つからなかった。だから僕は学校に行きたくなかったけど、やり直そうかな。英語が話せるようになりたい…」。
リビアの子たちは、小学校時代からカダフィ氏の革命思想をたたき込まれ、体制の抑圧下で過ごしてきた。
だが、露店の少年たちのたくましさは、この国の明るい未来を予感させた。(今村実)