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ベルリン 無音レース世界席巻

2011年11月18日

 週末の朝、起きて驚いた。ベルリンの自宅前の大通りがレース場に変わっていた。真ん前がゴールゲートだ。

 しばらくするとアナウンスの女性の声に続いてレースカーが近づいてきた。だが、何だか少し違う。騒音がないのだ。通りへ下りて観客に尋ねてみた。

 「いったいこの車の動力源は何?」

 「いや、エンジンも付いてないよ」

 350メートル先のスタート地点に行って納得した。高さ約3メートルのスタート台から坂を下る勢いだけで走っているのだ。「温室効果ガスの排出なし」をうたい文句に、環境立国ドイツ的と思ったら、「せっけん箱カーレース」として世界的にも有名らしい。目前の試合は何と「第63回ドイツ選手権兼第13回欧州選手権」だった。

 スギ材などを流線形に加工した自作軽量のレースカーでタイムを競う。車は父親の手作りで、150人のドライバーも10歳前後の子どもたちだ。地元から参加したロビン君は「集中力が全てさ。ゴール一点に集中して、並走する敵なんて見ないんだぜ」と、興奮気味。

 「こんなに楽しく、コックピットで風を切り突き進む快感を夢見ない子どもはいないでしょう」。区長の大会献辞は、F1世界チャンピオンを輩出するこの国の自動車レース熱さえ思い起こさせた。(弓削雅人)