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三家子村 保護策語るに落ちた

2011年11月21日

 中国で消滅寸前とされる満州族の母語、満州語。日常生活でわずかながら使われ、「満州語の生ける化石」とも呼ばれる黒竜江省三家子村を訪ねた。

 中国語(漢語)とのバイリンガル教育をしている小学校の門をくぐる。教室の壁に、満州語を書き取り練習した子どもたちの作品が並んでいた。

 縦に真っすぐ伸びた線の左右に、線や点、丸がついた流れるような書体。「カエル」「友人」…。この辺りまでは、ほほ笑ましい気持ちで読んだ。が、その先に、「わが祖国は中華人民共和国」「中国国旗の紅色は革命の証し」…。

 違和感。当局にただせば「愛国主義教育の一環」とでも説明するだろう。とはいえ、満州語を絶やしたくない、という純粋な場でもか。よもや、語学教育を通じ、過激な民族意識が芽生えかねないと恐れているわけでもあるまいし。

 村を歩き、完全な満州語を話すお年寄り宅を訪ねると、今度は頼んでもいない地元政府の役人がついてきた。

 「満州語の消滅は時間の問題」が専門家の共通の見立て。でも、あるお年寄りは「政府が満州語復興に尽力しているおかげで前途は洋々だ」とよどみなく言った。言わされているのは明らかだった。

 この国特有の上からの締め付け。どこかずれている。(朝田憲祐)