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福州 被害者処遇にも格差

2011年12月07日

 中国の福建省福州では、7月に浙江省温州で起きた高速鉄道事故の重傷者らが今も入院、リハビリ生活を送っている。訪ね歩いた重傷者の中で、1人の青年が強く印象に残った。

 青年は、事故で首や背骨付近の神経を損傷したが、順調に回復。「今でも神経がマヒしてます」と言いながら小刻みに震える手のひらを見せてくれた。

 取材した他の重傷者は、事故報告書の公表遅れや、鉄道省の対応に不満を示した。だが、青年は「時間を掛けて調査してくれているということ」「生きていることに感謝したい。けがの損害金は2の次です」と話した。

 違和感が募ったが、職業を聞いて納得した。国営電力会社の社員で将来を見込まれている中国共産党員だったのだ。

 他に取材した重傷者らは、6畳1間ほどの相部屋で窮屈そうに療養していた。だが、青年の部屋は広めの個室で身の回りの世話人付き。世話人はマッサージ師で、好きな時に施術してもらうという。手の震え以外の後遺症はなく、他の重傷者が松葉づえで不自由そうに院内を歩く姿とは対照的に、自力で外出もする。

 理不尽な格差への怒りがたびたび噴出する中国。高速鉄道事故の被害者の処遇にも大きな格差がある状況に、やりきれない気持ちで病院を後にした。(今村太郎)