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ニューヨーク デモと大統領の思惑

2011年12月05日

 確かに異臭がした。衛生状態も悪化し、ついに強制排除。ニューヨークの金融街から歩いて数分の自由の公園ことズコッティ公園。2カ月以上も若者が公園を占拠していた。

 もともと中東の民主化運動「アラブの春」の影響を受け、カナダの編集者が米国も改革が必要だとして「ウォール街を占拠しよう」と呼びかけた。本人は現場に来なかったが、米国の格差社会に反対する多数の人々が活動を継続している。

 ニューヨークとボストンは複数回、シカゴやサンフランシスコも現場取材した。昔のラルフ・ネーダー氏の消費者運動、世界貿易機関(WTO)加入反対運動と違い指導者を立てない。運動の共通分母は、米国の約1割の人間が富の大部分を独占し、一般人が搾取されているというマネー資本主義への反発だ。

 確かに「金持ちはより金持ちに。貧困者はますます貧しく」なっている。ただし、参加者たちはモスレム、環境、保険問題など、数十を超す多様な分野での不満を表明。中には「俺はその1割だ。話し合おう」とのサインを持つ金持ちもいた。

 オバマ氏が大統領になり、その反動で原理主義的、右翼的なティーパーティー運動が人気に。それに反発したのが反格差運動ともいえる。オバマ氏は再選を狙い運動を利用しようとするが、さて…。(野口修司)