2011年12月21日
58人が犠牲になった上海の高層ビル火災から、先月15日で1年がたった。市民の間でも記憶が風化しつつある中、火災の影響を痛感する騒動に見舞われた。
上海支局が入居するビルの管理人が先月末、支局を訪ねてきた。「来年3月から半年間、ビルの外装を改修する」。もったいぶるような言いぶりの管理人は、「その期間、ビルから出て行くことは可能か」と続けた。
1年前の高層ビル火災は、外壁改修の火花が引火したのが原因だった。監督を怠ったとして、市幹部も有罪判決を受けた。その後、ビル外装の改修中は入居者を退去させるよう、市当局が指導しているというのだ。
契約や退去に掛かる費用の扱いなど詳細を尋ねたが、言葉を濁すばかり。ビルには1月に引っ越してきたばかりで、煩雑な作業をまた味わうのも避けたい。管理人に「不可能、あり得ない」と答えると、「了解」とあっさり引き下がった。
聞けば、入居者全員から「不可能」と言質を取って責任を逃れた上で、入居させたまま工事に着手する腹づもりなのだとか。家賃収入も維持でき、管理人にとっては“最良”の方法なのだろう。
市の極端な指導もだが、早くもそれが形骸化している状況に、同じフロアの同居者たちも苦笑いで肩をすくめた。(今村太郎)