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ワシントン マリアさまの届け物

2011年12月22日

 職場に戻ると、財布が届いていた。

 トイレに行った時に落としたようだ。その後外出したが、なくしたことにも気付いていなかった。

 ビル管理会社の女性が財布の中のクレジットカードで私の財布と確認し、届けてくれたらしい。

 恐縮してお礼を言いに行った。拾い主の名を尋ねると、清掃係の「マリアさん」だという。お礼を言いたいと伝言すると、翌日若い女性が訪ねてきた。

 「あなたがマリアさんですか。本当にありがとう」。イメージ通り、とても優しそうな人だ。

 だが、状況を説明してもいまひとつ話がかみ合わない。どうやら別人らしい。結局、3人目に訪ねてきた女性が財布を見つけてくれたマリアさんだった。

 「きっと困っているだろうと思って」。聖母と同じ名を持つ彼女は中米出身で、ビルの掃除が仕事。控えめな笑顔を見ながら、国の母親を思い出した。

 思えば子どものころから慌て者だった。忘れ物や落とし物は日常茶飯事。ランドセルを忘れて学校に行ったこともある。あきれ顔の担任の教師に、カバンを届けにきた母親が何度も頭を下げていた。

 外を見れば、通りはすっかりクリスマスムードに包まれてきた。マリアさま、ありがとう。至らぬ自分だが、まだ運だけはいいらしい。(久留信一)

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