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モスクワ 新型標識も視界不良

2012年01月04日

 ロシアで起きる交通事故の4割は人と車の衝突だ。モスクワの日の出から日没までは今、約7時間。日が差す時間はもっと短い。鉛色の雲が空を覆う昼間も多い。暗くて、車から車道の横断者が見えにくいのが一因だ。

 支局近くのモスクワ川河畔を夕方散歩した。川沿いの4~6車線の道を渡ろうと横断歩道を示す標識まで歩いたが、そこに横断歩道の白線はなかった。ここはロシア。その手の不備には驚かない免疫は既にある。「標識があるなら大丈夫か」と渡り始めた途端、警笛を鳴らす車が、止まろうともしないで目の前を通過し、驚いた。

 人身事故の被害者が首都だけで年間1万人以上というのはモラルの低い運転者の横行もあるが、交通行政の不作為でもある。

 怒りを覚えつつ歩いていると、点滅ランプが上部に付いた横断歩道の新型標識を発見。その上には充電用の太陽電池も。これなら、運転者は数百メートル手前から横断歩道を認識できる。モスクワには既に3カ所あり、年内には142カ所に増設。来年以降も数百カ所にできるそうだ。

 後日、知人らに新型標識の話をしたら、1人のロシア人が「電源の充てんに8時間以上の日照時間が要るらしい」と言っていた。最も必要とされる暗い冬場に「そこにあるだけ」にならないことを祈った。(原誠司)