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ニューヨーク 悩ましい寄付の季節

2012年01月12日

 ピンポーン。日曜日の夜、自宅で夕食を食べていた時のこと。扉を開けると、小学校高学年くらいの少年が立っていた。足元には大きなスーツケース。既に、外は真っ暗。

 「どうしたの?」と聞くと、「ブロンクスから来たのですが、子どもたちのために寄付をお願いします」と。

 ブロンクスは、米ニューヨーク市マンハッタンの北東部に位置する地域。ニューヨーク市郊外にある自宅からは車で30分ぐらい離れている。寄付金は子ども会の運営費用に充てるのだという。

 活動の様子を撮った写真を見せられ、「少しばかりでも助けていただけたらうれしい」などと、大人のような文句を早口でまくしたてる。冬の寒い中、気の毒で、10ドル札を渡して帰ってもらった。

 もともと寄付文化が根付いている米国だが、12月はそれが一層増す。日本でいう「歳末助け合い」の様相。街角では各種団体が募金を訴え、自宅にもさまざまなチャリティーを呼び掛ける手紙が山のように届く。ある知人は「寄付の依頼が多いから、自宅の電話には出ないようにしている」と言っていた。

 しばらくして、また別の少年が家にやってきた。今回は対応できず帰ってもらったが、前回の少年と同じような文句を口にしていた。玄人っぽくて、ちょっと気になっている。(長田弘己)