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オスロ 感激の初対面に和む

2012年01月10日

 背後に迫る大きな人影。ノーベル平和賞の取材でノルウェーのオスロを訪れ、滞在先のホテルで朝食を取っている時だった。2メートル、1メートル、50センチ…。あまりの接近を察知して振り返った。

 驚いた。目に飛び込んできたのは、今回の受賞者でリベリアの平和活動家リーマ・ボウイーさんだった。どうやら、同じホテルに宿泊していたらしい。

 ゴムまりのような体を色鮮やかな民族衣装で包んだボウイーさんは、ヘジャブ(かぶりものの総称)を着用した女性と何度も抱擁をかわしていた。よく見ると、相手の女性は翌日の授賞式で平和賞を同時受賞するイエメンの人権活動家タワックル・カルマンさん。

 お互いに人懐こい笑顔を浮かべながら「もっと早く会いたかったわ」。盗み聞きしていたわけではないが、あまりの距離の近さに、両者の会話はどうしても耳に入る。感激の初対面の場に居合わせたのは幸運だった。

 2人は今回、リベリア大統領のエレン・サーリーフさんとともに平和賞を受賞した。いずれも国の平和構築や民主化に向け非暴力のデモを主導。特に女性の人権保護や社会参画に力を注いできた。

 弾圧に負けない「不屈の闘士」として知られるが、垣間見た素顔はそのイメージを覆す。人を包み込む優しい笑みに触れ、こちらの心も和んだ。(小杉敏之)