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ワシントン チップ形より気持ち

2012年01月11日

 ある夜、ワシントン市内の宴席から帰宅する際に乗ったタクシーの運転手がこう話し掛けてきた。「日本人が好きなんだ。いつか日本に行ってみたい」。日本人を褒められて悪い気はしない。理由を尋ねると、彼から意外な答えが返ってきた。

 最近乗せた日本人女性客が、メーター料金分しか紙幣の持ち合わせがなく、小銭を全部チップとして置いていったという。米国ではジャラジャラと小銭でチップを渡すのは失礼にあたるといわれる。だが、この運転手はむしろ、何とかチップを出そうとした女性に心を動かされたそうだ。

 チップの習慣には、いつも悩まされる。どのタイミングで、どのくらいの額を渡せば、スマートなのか。そもそもチップが必要なのかどうかよく分からない場面も多い。そんなことばかり気にしてきたが、結局は、この日本人女性のようにサービスに対する感謝を伝えればいいのかと少し気が軽くなった。

 パキスタンから米国に来て25年になるという運転手とは、その後も会話が弾んだ。日本の観光スポットから始まって、米・パキスタン関係、パキスタンの将来、ついには宗教論に話が及んだところで、自宅に到着した。酔客のたどたどしい英語に付き合ってもらったお礼に、いつもより少し多めにチップを弾んでタクシーを降りた。(竹内洋一)

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