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パリ 単一通貨 思いは複雑

2012年02月24日

 郵便局でもらった釣り銭にドゴール将軍がデザインされた2ユーロ硬貨があった。しかも2枚。フランスで最も目にする記念硬貨だが、同時に2枚は珍しい。少し得をした気分だ。

 つくっている国によってコインのデザインが違う欧州の単一通貨ユーロ。各国の記念硬貨も国境を越えて流通しているのでバラエティー豊かだ。ただ中には、この通貨危機の時代に皮肉に感じてしまうものもある。

 例えば、ドゴールの硬貨は第2次世界大戦中の1940年6月、亡命中のロンドンから母国にナチス・ドイツへの抵抗を呼び掛けた歴史的ラジオ放送の70周年を祝うもの。放送は英仏の友情の象徴でもあるが、70年余り後の今、英仏関係で目立つのは危機対策をめぐる不一致だ。

 通貨ユーロ誕生10周年記念の硬貨も各国版が出回っているが、現状を考えると素直に喜ぶ人は少ないはずだ。欧州統合に深く関わるローマ条約の50周年記念硬貨も同様だろう。

 ギリシャの1ユーロ硬貨のデザインは、古代のドラクマ硬貨を模したフクロウ、ギリシャ神話の一場面を描いた2ユーロとともに味がある。ユーロ圏離脱も語られている同国のコインを釣り銭の中に発見するたびに、活力を失う一方のアテネの街や同国で出会った人々の怒りや絶望を思い出す。(野村悦芳)