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韶山 豊かな古里に何思う

2012年03月22日

 中国湖南省の省都、長沙から100キロ南西にある韶山(しょうざん)は中国共産党の初代主席、毛沢東の古里だ。もともとは何の変哲もない村だったが、今や高速道路も敷かれる立派な観光地。入り口には「毛同志は永遠に人民の心に生きている」と巨大な看板があった。

 生家の前は観光客が長い列をつくる。周囲に後から整備された施設には、仕掛けも満載。例えば広場の道は、毛の誕生日(1893年12月26日)に合わせ、長さ189.3メートル、幅12.26メートル、銅像の高さは建国記念日の10月1日にちなみ10.1メートルといった具合だ。

 「村は以前よりずっと豊かになりました」。毛沢東同志記念館の職員、張旭さんは地元出身。長沙の学校を出て4年前にUターン就職した。「これも毛主席のおかげ」。子どものころはどの家も農業をしていたが、だんだん畑を耕す人は減り、代わりに売店や食堂を営む人が増えた。

 確かにどこに行っても物売りやガイドの客引きの声が騒がしい。「農民に依拠し、農村を革命根拠地とする」のが毛の革命理論だったが、もはやここに農民は存在しない。「豊かになった」故郷を草葉の陰から見守る毛は、何を思っているのだろうか。毛が好んだ紅焼肉(豚の角煮)をほおばりながら、ふと考えた。 (渡部圭)