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烏坎 「再見」願うその訳は

2012年04月12日

 「また来たのか! お茶でも飲んでいくか!」。村民が団結して腐敗幹部を追い出した中国広東省の烏坎(うかん)村。1月に初めて訪れた際の、デモの緊張が解けないような硬い表情と対照的に、今月初めに行われた村民委員選挙では、みんなが明るい表情で迎えてくれた。

 村民が自治組織をつくり、村を指導する省や市政府に腐敗追及と民主選挙を求めた異例の騒動。村民の要求通り民主選挙が認められたのだが、農民の不満解消が課題となっている中央政府が逆手に取り、ガス抜きのために“政治利用”した面も強い。

 実際、直後に北京であった全国人民代表大会(国会に相当)では、民主選挙が行われたことが、農民の権利を守った「成果」として強調された。

 ともあれ、村民は権利を勝ち取り、民主的な村政を手にした。だが、選挙直後には、今後への不安もそこかしこで耳にした。デモから選挙まで、村には多数のメディアが内外から押し寄せた。

 メディアによる監視の目が光る中、村民の主張が次々と聞き入れられた。選挙後、その目がなくなっても、村民による自治を維持できるのか-。

 「また来てくれよな」。最後に声を掛けてくれた顔見知りたちの表情からは、惜別に加えて、不安や懇願が見て取れた。 (今村太郎)