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北京 人権弾圧 脅威論の源

2012年05月10日

 中国の人権派弁護士、江天勇さんに取材する機会を得た。昨年2月に警察に拉致され約2カ月間、行方不明になっていた。家族と連絡が取れず2カ月も自分がどこにいるか分からない不安の中、“不眠不休”で尋問を受けた様子などを時に目に涙をためながら約3時間、証言してもらった。相当な苦痛だったろう。

 江さんはエイズウイルス(HIV)感染者の人権擁護活動などの取り組みで昨年9月、米団体が主催する「傑出民主人士賞」を受賞。ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏も2003年に選ばれた賞だ。

 中国では多くの活動家が拘束され、同様の仕打ちを受けている。「中国版ジャスミン革命」から1年の取材で、江さんと同時期に拘束された10人近くの活動家にも今回、接触を試みたが、「当局に監視されている」「まだ敏感な時期だ」などと取材を断られた。

 江さんも当局から外国記者の取材を受けるな、と誓約書を取られた。「匿名で顔を隠すこともできる」と伝えたが、「(逮捕は)怖くない。中国の現状を変えねば、という思いを今回の拘束でさらに強くした」と即答した。

 中国外務省は「中国人民は現在、歴史上最も良い人権状況を享受している」と声を張り上げて力説する。そういう頑(かたく)なな態度が、中国異質論や脅威論を生む源になっている。(安藤淳)