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香港 大陸マネー怒り高騰

2012年05月15日

 高級ブランド店が集まる香港の広東路(カントン・ロード)を歩いていると、怒声が聞こえてきた。やじ馬根性から行ってみると、中国本土からの買い物客と香港市民が言い合っていた。どうも、本土からの買い物客がブランド店前でつくる行列が、通行人の妨げになるほど長く延びたのが原因らしい。

 関税の低い香港には、ブランド品を本土より安く買いたい中国人が大挙して押し寄せる。最近、その中国人と香港市民との関係は、過去になく険悪だ。

 1月、飲食禁止の香港の地下鉄で、子にお菓子を食べさせていた中国人を香港市民が注意したことが発端となり、口論になった。ネットに流出したその画像を見た北京の大学教授が「香港人は大英帝国の犬」と発言すると、香港市民は「中国人は香港を食い荒らすイナゴ」と反撃。さらに、本土からの自家用車乗り入れに反対するデモなどを展開した。

 香港市民は日ごろ、中国本土からの投機マネー流入による物価高に苦しんでいる。特に、不動産や家賃の高騰は深刻だ。

 親中派候補が中国政府の支持を得て当選した3月の行政長官選挙で、香港市民は模擬投票を実施。投票した22万人のうち12万人が白票を投じた。白票には、買い物客のマナーや投機マネーへの怒りも込められていたはずだ。(今村太郎)