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カイロ 「春」第2幕は花曇り

2012年05月24日

 「新しい大統領がここにいるぞ!」「神は偉大なり」-。

 5月に投票が迫ったエジプト大統領選。イスラム原理主義勢力の有力候補の出陣式で、熱狂した支持者らがスローガンを叫んだ。

 大勢が車道にあふれ出て、付近は大渋滞に。エンジニアの男性(30)は「彼が大統領になればシャリア(イスラム法)が適用され、国は変わる」と早くも勝利したような顔だ。

 「当選後は、酒類工場やナイトクラブは直ちに閉鎖する」。同候補の発言には、時にぎょっとさせられた。

 イスラム勢力からは別の有力候補も出馬。届け出時は1000人以上の支持者が詰め掛けた。その場に「彼はすべての危機から国を救う」と記した横断幕。

 現れた候補は興奮した支持者らにもみくちゃに。巻き込まれた記者も眼鏡が曲がる被害に遭ってしまった。

 一方、旧ムバラク政権時代の副大統領も届け出た。あれほど国民に嫌われたムバラク氏の側近なのに、支持が広がり有力視された。

 ところが、今度はこれら3人を選挙管理委員会が、候補資格を不適格と認定するどんでんがえしが起きた。

 昨年2月の民衆革命の熱気はもうない。政情や経済は混乱し治安は悪化。事態を劇的に変えてくれるリーダー待望論が国を覆う。

 「アラブの春」の第2幕は、花曇りの日々が続く。 (今村実)