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ライプチヒ 地元の宝 荘厳に輝く

2012年05月22日

 ドイツ東部ライプチヒのトーマス教会少年合唱団は1212年に創立、今年で800周年を迎えた。1723年から27年間、カントル(教会楽長)として合唱団を育てた音楽家ヨハン・セバスチャン・バッハの327回目の誕生日も記念行事で市内が彩られた。

 市長招待の「市民で祝う集い」が格別だった。若者からお年寄りまで、開場前から入り口に並んだ2000人以上の市民で立すいの余地もない市庁舎のホール。荘厳でいて美しく、心洗われるような歌声が響き渡った。ずいぶん以前のことだが、トーマス教会の週末礼拝で初めて聴いた時の感動がよみがえってきた。

 合唱団員は9歳から18歳の男子で、現在も約100人が規律の厳しい寄宿舎生活を送りながら、音楽と勉学に励む。連綿と続く団員の歴史は、時代に伴って自由な雰囲気に包まれても「音楽の学び方は変わっていない」。現在のカントルで自らも団員経験があるビラーさんは話す。

 合唱団が舞台を降りて無邪気そうな少年に戻ると、団員OBが登場して集いは佳境に。変声期に悩んだのが遠い昔のベテランたちが祝辞代わりの歌を披露した。有名ロックバンドも実はOBだった。盛り上がる市民たちと話すと、全員が「合唱団はライプチヒの宝物さ」とほほ笑んだ。 (弓削雅人)