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ロンドン マナー違反も次善策

2012年07月11日

 日本に置き換えれば、皇居周辺に当たる一帯だ。ロンドン中心部のバッキンガム宮殿からトラファルガー広場につながる一本道「マル」。先日、ここを発着点に行われた10キロロードレースを取材した。号砲の30分前に到着すると、驚きの光景が目に飛び込んできた。

 100メートル近くあっただろう。道沿いにたたずむウィリアム王子の公邸、セントジェームズ宮殿の壁に向かい「立ちション」するランナーがずらり。道の反対側に広がるセントジェームズ公園の木陰では、しゃがんで用を足す若い女性もいた。

 発着点付近に設置された多数の簡易トイレは長蛇の列。気持ちは分かるが、場所が場所だ。あまりの大胆さにあぜんとしてしまった。

 不思議なのは、本来なら罰金が科せられる行為を現場の警察官が見て見ぬふりだったこと。この話を助手に伝えても平然と言う。「チャリティーレースだったから大目に見られるんです」。出場条件の慈善団体への募金が、ランナーの免罪符になっているのかもしれない。我慢も遠慮もないのがうなずけた。

 “教訓”がある。8年前のアテネ五輪で、女子マラソン世界記録保持者のポーラ・ラドクリフ選手(英国)が、腹痛のため不覚の途中棄権を余儀なくされた。「急にトイレに行きたくなった」との言葉は今も記憶に新しい。 (小杉敏之)