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プノンペン 許せない子ども搾取

2012年07月26日

 猛暑の昼下がり、出張先のカンボジアの首都プノンペンにあるオープンカフェで、通訳の男性とひと休みしていると、汚れた服を着た幼女が近づいてきて手を差し出した。

 支局のあるタイのバンコクで、深夜に物乞いをして歩く子どもたちを取材したばかりだった。物乞いがもうかる限り、子どもを使った物乞いビジネスはなくならない。人身売買や誘拐の温床にもなる。だからいったんは首を横に振った。

 幼女は決して帰ろうとしなかった。小学低学年ほどのあどけなさだが、小さな体から必死さが伝わってくる。「よほど事情があるのだろうか」。結局、1ドル紙幣を手渡した。

 「金をあげると次から次に来るよ」。通訳の男性の言うとおり、代わる代わる2人の幼女が現れた。1人はなぜか泣いていた。1ドル渡して後を追った。

 幼女が消えた駐輪場に近づくと、2人の大人の男女が自転車の陰に座り込んで食事をしていた。男性はすすり泣く幼女から紙幣を受け取り、もう一度行けというように叱りつけた。最初に物乞いに来た幼女が傍らでうつむいていた。

 男女は親のようにも見えた。家族で生きるためだとしても、やりきれない気持ちに襲われた。どんな境遇に生まれるか、子どもはそれを選べない。だからもっと守られる必要がある。 (杉谷剛)