2012年08月21日
さすが五輪発祥の国と驚きあきれるような犯罪の手口をアテネで聞いた。
1896年に開かれた第1回近代五輪の選手村となった施設が、濃い緑に囲まれる公園。日本からギリシャに渡って約40年という知人が言った。
「このミカンの並木には、夜は近づかない方がいいんですよ」
のどかな公園の歩道に100メートルほど植えられた南国果実の木々。なぜ、といぶかると「油断して歩いていると突然、木の上から人が飛び降りてくる。強盗なんですよ」。人影を見られれば、心構えもされるし歩みもそらされる。だから木の上に潜み機をうかがうというわけだ。
こうした手口は、2010年に財政緊縮策が始まってから現れたという。随分安心できない社会になったものだ。
一方、デモの聖地ともなったシンタグマ広場の近くでは、どこかほのぼのとした光景も見た。
高級ブティックの入り口に大型犬が寝そべる。店の関係者や近くの人が飼い主であるわけではない。誰かの飼い犬であるとしか分からない。それでも、誰も文句を言わない。客は何とはなしに犬をまたいで出入りし、店員も犬を追い払わない。
厳しい財政緊縮にあえぐギリシャだが、おうようさも、まだ失われていない気がする。 (有賀信彦)