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モスクワ 悪法に対抗 「お伺い」

2012年10月10日

 「友人4人と店にパンを買いに行ってもいいか」「待ち合わせのため、数人で一緒にバス停に向かってよいか」-。ロシア紙によると、同国西部ニジニーノブゴロドの市民が最近、市役所にそんな「お伺い」の手紙やメールを次々と送り付ける運動を始めたそうだ。

 実はこれ、ロシアで6月に施行された法律に対する市民の抗議運動。その法律は、デモなどの集団行動で警察が拘束した「違反者」に、国民の平均年収にも相当する罰金を科すことを定めている。

 国内で断続的に続く反プーチンの抗議デモを抑え込む政権側の意図があるとされ、法律が想定する「違反」には「ある目的で大勢の人が決まった道を歩くこと」などがある。

 デモでなくても、政権側のさじ加減で市民を拘束することが容易になったともいえる。「お伺い運動」には、「そんな社会には住んでいられない」という市民の思いが込められている。

 6月の大規模抗議デモでは、スターリンの大粛清が起きた1938年を題材にしたプラカードも初登場。デモ参加者からは、この法律の施行を「スターリン時代に逆戻りしたようだ」と批判する声を聞いた。今回のデモで拘束された者はいなかったが、今後も平和的に続けられるかどうかは、プーチン氏の考え方次第という状況になっている。(原誠司)