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ライプチヒ バッハ被災地に響く

2012年09月05日

 ドイツの作曲家ヨハン・セバスチャン・バッハにゆかりが深い同国東部ライプチヒで6月に開催された恒例の「バッハ音楽祭」。毎年、日本から訪れる観客が増えていることに驚かされる。

 主催者によると、今年は600人で、昨年から5割近い増加。九州や東北など地域も広がり、11日間の期間ずっと滞在し、楽しんだ人も。日本での音楽祭の人気、認知度も定着してきたという。

 今年はもう1つ、日本との関わりを深める出来事があった。指揮者でオルガン、チェンバロ奏者の鈴木雅明さんが、バッハ作品の演奏に貢献した音楽家をたたえる「バッハメダル」を日本人で初めて贈られた。

 授賞式のあいさつで「毎日食べるパンのようだ」と、欧州人の生活とバッハ音楽の自然な調和を評した鈴木さん。東日本大震災の復興支援でもバッハを聴いてもらったという。

 「つらい思いをしている現地の人たちから『癒やされた』と言われ、音楽というのは、そのまま人の心に伝わるものだと本当に実感した」と、うなずきながら話してくれた。

 世界的な音楽家であっても、音楽の力を再認識したという言葉に重みを感じる。欧州の日常にあるバッハの音楽は、国境を越えて被災地の人の心にも響く力を見せた。人気はさらに広がっていきそうだ。 (弓削雅人)